「居抜き清掃(いぬきせいそう)」とは、前のテナントや使用者が退去した後の状態のままで行う清掃作業を指します。
「居抜き」とは?
飲食店やオフィスなどで、前の利用者が設備や内装などを残したまま退去し、次の利用者がそのまま引き継ぐことを「居抜き」と言います。厨房機器、内装、什器などがそのまま残っているケースが多いです。それらは居抜き物件とよばれ、近年は飲食店をはじめとし、美容室などさまざまな業種での利用がみられます。
「居抜き清掃」とは?
上記のような居抜き物件でおこなう清掃作業のことを指します。居抜き物件を、新しいテナントが利用できるように、前のテナントが残した汚れや状態を清掃やメンテナンスすることです。
「居抜き清掃」の主な掃内容とは
居抜き清掃の内容は、前のテナントが残した設備や備品などを活かしつつ、次の使用者がそのまま利用できるように清掃・整備する作業です。清掃内容は、飲食店、オフィス、美容室などによって多少異なります。今回は飲食店の場合を例に紹介します。
厨房設備の清掃
厨房を中心とした換気扇やレンジフードの油汚れ除去やグリストラップの清掃・脱臭、コンロやオーブンなどの機器清掃、シンク・排水口の洗浄などの設備の清掃に加えて、冷蔵庫や冷凍庫、棚などの拭きあげなどもおこないます。
物件の基本的な清掃
店内の床や壁、天井などの清掃では、床材の洗浄、フローリングやタイルなどのワックスがけをおこなったり、壁紙やクロスの汚れ落とし、天井のホコリやカビ取りを中心におこないます。またトイレや洗面所の清掃では、便器・手洗い器の除菌洗浄、尿石や水垢の除去に加え、消臭・防臭処理まで施す場合が多くみられます。
照明・エアコン・換気設備の清掃
エアコンフィルターや内部の洗浄、照明器具の拭き掃除や蛍光灯の交換などをおこないます。
什器・備品の清掃
テーブル、椅子、カウンターなどの表面清掃、棚や収納スペースの除菌・拭き掃除などをおこないます。
害虫・防臭対策
ゴキブリやネズミなどの防除作業などが必要であればおこないましょう。消臭・除菌スプレーの散布、臭気センサーや脱臭機の設置をおこない場合もあります。
放置されたゴミや汚れの除去
その他、以前の使用者が残していったゴミや汚れなどを除去する作業をおこなう必要もあります。
居抜き清掃の特徴
居抜き清掃では、内装や設備はのこしたまま完全な原状回復をするわけではありません。そのためスケルトン清掃と比較してコストが安く済みます。清掃期間も短く済むため、次の営業や使用がスムーズに始められるといった特徴があります。
居抜き清掃の必要性
居抜き清掃はなぜ必要なのでしょうか。
次のテナントにとって使いやすくするため
次の利用者がすぐ使える状態にするために、設備がそのまま使えても、汚れや臭いが残っていれば営業開始に支障が出ます。清掃済みであれば、工事や準備に集中でき、開業までのスケジュールを短縮できます。
物件の価値を保つため
居抜き清掃は、貸主・借主の双方にメリットがあるといえます。貸主にとっては、物件の価値維持、早期成約が期待できるようになります。借主からすると、入居準備がスムーズで余計な改装費がかからないという点がメリットです。不動産オーナーにとっては、清掃済みの物件は内覧者に好印象を与えます。汚れたままだと、コストがかかると敬遠されることもあるからです。
営業許可や衛生基準を満たすため
飲食店の場合などでは、法令・保健所対応として清掃が必要となります。飲食店などは、保健所の営業許可取得にあたって清潔な環境が必須であり、残置物や汚れがあると、営業許可が下りない可能性もあります。
衛生・安全面の確保
前のテナントのゴミや油汚れ、カビ、害虫などが放置されていると、健康被害や事故の原因になります。特に飲食店では、グリストラップや換気扇などの清掃は衛生管理上必須です。
コスト削減・資源の有効活用
スケルトン解体してゼロから内装をつくるより、居抜き物件を清掃・再利用する方がはるかに安上がりです。設備の再利用が可能な場合、原状回復コストや廃棄物処理費用も節約できます。
居抜き清掃の必要性は、次のテナントや使用者がスムーズに物件を活用できるように整えることにあります。特に飲食店や美容室、オフィスなど、設備を引き継いで使う業種においては、衛生・安全・印象・法令対応などの面から非常に重要です。
居抜き清掃のポイント
居抜き清掃を業者に依頼する際は、トラブルや無駄なコストを避け、スムーズに次の営業や入居ができるように、以下のポイントをしっかり確認することが大切です。
清掃範囲を明確にする
事前に図面や写真を見せて相談するとスムーズです。
- どこまで清掃してもらうのか(厨房、トイレ、床、天井など)
- 機器や設備のクリーニングも含めるか(例:冷蔵庫、換気扇、エアコンなど)
- 使わない部分(解体予定など)は省いてもOK
見積もりは複数業者に取る
内容・料金を比較することで、相場感がわかります。安すぎる業者は、対応が雑であったり、追加料金が発生する可能性があるので注意しましょう。
実績のある業者を選ぶ
居抜き清掃に関して、飲食店やオフィスなど、同じ業種・規模の清掃実績があるか確認しておくことは重要です。ホームページや口コミもチェックしてみるといいかもしれません。
立ち合いや確認のタイミングを決める
清掃前に設備や汚れの状況を一緒に確認しておきます。清掃後に仕上がりを確認することで、やり直し依頼がしやすくなります。
必要なら追加オプションも確認
害虫駆除・消臭処理やエアコンの分解洗浄、廃棄物・残置物の処分などは追加の作業となる場合が多いです。また特に飲食店では グリストラップ清掃や厨房の油除去は必須といえるため、あらかじめ相談しておくことをおすすめします。
スケジュールに余裕を持つ
居抜き物件は状態にばらつきがあるため、思ったより時間がかかるケースもあります。営業開始日から逆算し、余裕をもって2〜3週間前には居抜き清掃をおこなうと安心です。
まとめ
前の店舗が閉店して時間が経っていたり、油汚れやカビが多い場合などは居抜き清掃は必要です。また飲食店や美容室、医療系など、衛生基準が厳しい業種などは業者に依頼してプロの居抜清掃をおこなってもらう必要があるでしょう。