飲食店厨房でよくある事故
飲食店でよくある事故は以下の通りです。
【令和2年の飲食店の労働災害】
転倒 | 1386人 |
切れ・こすれ | 970人 |
高温・低温の物との接触 | 708人 |
動作の反動・無理な動作 | 496人 |
この中で最も人数の多い『転倒』に関しては高齢者の人数が多く、『切れ・こすれ』に関しては約半数(51.5%)以上が30歳未満の若い世代で多くなっています。具体的な事故の例には次のようなものがあります。
【転倒】
- 調理作業中に濡れた床や落ちていた食材を踏み、足を滑らせた
- 食材を運んでいる際に段差につまづき転倒した
- 戸棚からはみ出ていた食器や食材に気づかず足を引っ掛けたり、床にある溝に足を取られて転倒した
【切れ・擦れ】
- 包丁で食材を切る作業中に誤って手や指を切ってしまった
- スライサー使用中に食材が挟まり、手で押したがためにスライサーの刃で手を切った
- ガラスコップが割れており洗い物中に手を切った
【火傷】
- 揚げ物をしている時に油が跳ねてヤケドした
- オープン等を使用した調理の際、焼き上がったものを注意せず持ちヤケドした
- スープや熱い鉄板を運搬中にバランスを崩し手に当たってヤケドした
- フライヤーの掃除前に油を抜く作業中、不注意でヤケドした
飲食店厨房における基本の安全対策
ここからは、飲食店厨房でよくある事故に対する安全対策を紹介します。
転倒防止
- 調理場や厨房で床が水や油で塗れていると滑って危険なので、こまめにふき取るようにする
- 調理場や厨房の床に勾配を付けて、水が溜まらないようにする
- 従業員に滑りにくい靴を履いてもらう
- 段差がある場所には注意喚起のテープなど、目印になるものを張っておく
- 作業通路には、転倒の原因になるような物をなるべく置かないようにする
- 床材が剥がれている箇所は早急に修繕する
- 食品を運ぶときには走らないよう徹底する
切れや擦れ防止
- 無駄な力を入れなくても切れるように、定期的に包丁などは研いでおく
- スライサーなどを使うカット作業を行う際には、特殊繊維素材の耐切創手袋を必ず使用する
- 包丁の落下などで足のケガを防止するために、作業中はまな板やシンクの上に包丁を放置しない
- ミキサーなど回転する刃を触る際には、電源を確実に切り専用の道具をつかって扱うようにする
- ガラス製の食器を洗う際には、ゴム手袋などを使うようにする
- ゴミ箱は、破片により割れたりしないような材質のものを使用する
火傷の安全対策
- 高温の調理器具を使う場合、必ず鍋つかみや耐熱保護手袋を使用する
- 水に濡れていると熱が手に伝わり蒸気による火傷を引き起こす危険性があるので、乾燥した状態で使用する ・揚げ物などの調理作業中は、腕まくりなどなるべく皮膚を出さないようにする
- フライヤーの油を抜く場合、油が完全に冷めてから作業をする
- 加熱された釜、鍋などは他の作業員が接触しない安全な場所に置く
飲食店の安全対策で大切な『5S』
ここまで紹介してきたように、飲食店の安全対策では『5S』が重要だとされています。5Sとは、整理、整頓、清掃、清潔、躾の頭文字をそれぞれアルファベットで取った言葉であり、以下のことを意識するようにしましょう。
整理
不要なものと必要なものを区別し、不要と判断されたものは全て廃棄するようにしましょう。
整頓
飲食店では先入れ後出しが基本で、食材や仕込んだ具材は日付の古いものから使用されます。一部の店では古い食材を『兄貴』、新しい食材を『弟』という言葉で表現しますよね。先入れ後出しがうまくいかないと、食材の品質が低下し、時には腐敗する可能性があるので、日頃から整頓を意識するようにしましょう。
清掃
清掃は飲食店の衛生環境に直結しています。厨房だけではなく、テーブルやイス、トイレなど、お客様が利用する場所もしっかりと清掃にするようにしましょう。
清潔
見た目が美しく整頓されていることだけではなく、除菌や抗菌などを徹底して清潔さを保つことも意識しましょう。
躾
飲食店で働く全員がこれらの衛生管理や意識を徹底して、掃除や整理整頓に取り組めるように日頃から教育を施していくことが大切です。
まとめ
いかがでしたか。飲食店の安全対策では、起きやすい事故に対する対策をいかに徹底していけるかが大切です。起きやすい事故としては『転倒』、『切れ・こすれ』、『火傷』などがあります。これらの事故を防ぐために、5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)を意識した取り組みをしていきましょう。具体的にどういった対策をすればよいかについては、本記事で紹介した内容を参考にしていただければと思います。